【オススメ】 冲方丁、熊倉隆敏/十二人の死にたい子どもたち


十二人の死にたい子どもたち(1) (アフタヌーンコミックス)

■【オススメ】「十二人の怒れる男」の換骨奪胎。 自殺するために集まった見知らぬ者たちの話。

廃病院に集まってきたのはネット上の自殺サークルの 呼びかけに応じ、テストを受けて合格した人々。 そこでみんなで一緒に死ぬ手はずだったのだが、 用意されたベッドの上で既に一人死んでいた。 しかも集まったのは十三人。人数が一人多かった。


安楽死を実行するかどうか、全員一致で決める、 反対する人が一人でもいれば話し合う、 というルールのもと展開される、ほぼ密室の会話劇。 「十二人の怒れる男」を下敷きに、 「11人いる!」の要素も継ぎ足した感じ。


題材が安楽死による自死というテーマで、これだけでも話を展開できるのだろうが、それでは下敷きにした作品そのままに転がすことになってしまうので、アクシデントとして一人多いという要素を追加している。それが推理ものとして話のドライブにはなっている。


なぜ死のうと思ったのか、この場をどう考えているのか、を 時にそれぞれの人物の内面に入り込んで描写する手法は、やや鬱陶しい。下敷きにした「十二人の怒れる男」やそのパロディでもある「12人の優しい日本人」はいずれも舞台劇であるために内面を描かれることはなかった。そこに踏み込んだのは、キャラクターを際立たせる点では機能したが、作品をややごちゃつかせた感もある。そして登場人物12人はやはり多い。描き分けははっきりとなされているものの、一部のキャラクターに添え物感を覚えるのは否めない。


とはいえユニークな題材に深く切り込んでおり、面白い。 死を扱う話で面白いという表現が良いのかわからないが、 下敷きにした作品にある根本思想を踏まえた物語になっていたな、 というのが最終巻まで読んだ感想である。


というわけで最終3巻まで刊行済→十二人の死にたい子どもたち(3) (アフタヌーンコミックス)  原作はこちら→十二人の死にたい子どもたち (文春文庫)


【データ】
原作= 冲方丁、漫画= 熊倉隆敏
十二人の死にたい子どもたち
【発行元/発売元】講談社 (2017/11/7) ※電子版で購入
■評価→ B(佳作) ■続刊購入する?→★★★★★
■購入:
amazon→ 十二人の死にたい子どもたち(1) (アフタヌーンコミックス)

ネット上のホームページに導かれて、廃病院に集まった十二人の少年少女。初対面の彼らの目的は全員で「安楽死」をすること。だが、決行するための地下室にはすでに一人の少年が横たわっていた。彼は、自殺か、他殺か、そもそも誰なのか。少年少女たちは不測の事態に際し、この集いの原則「全員一致」に従い話し合いを始める──! 異才・冲方丁の直木賞候補作を、実力派・熊倉隆敏が渾身のコミカライズ!


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【オススメ】 ヨシカゲ/モナリザマニア


モナリザマニア 1 (ジャンプコミックス)

■【オススメ】審美眼を持った青年が、贋作に手をかける。 「ギャラリーフェイク」の後継的作品。

絵画修復の工房を経営する祖父のもとで暮らしている 青年は芸大を目指すが4浪めに。技術はあるが、 オリジナリティがないことに、自分でも薄々気がついていた。


しかし、そんな彼が描いた絵を見て才能があると 声をかけた人物が一人。元ルーブル美術館の学芸員だったという 画商が、贋作を持ちかける。 そして主人公は自身の才能、観察と技術を証明したい、という気持ち が勝り、画商とタッグを組む。


真作のような贋作を作り出す話。主人公は、作家に憑依するかのように 審美眼をトレースできる。ただそれだけでは贋作売りの 詐欺師の話になるので、物語はより大きなテーマを用意している。 それが、モナリザ。ルーブルにあるのは贋作であり、真作は5人の所有者のうちの誰かが持っている、という設定である。


真作の可能性も含むモナリザを収集する、そのために真作のような贋作を使う、という話。無理がありそうな設計だが、コレクターにはコレクターになっただけのストーリーがある、という背景を用意し、青年がこの詐欺話、コンゲームに組み込まれるべき理由を上手に作りこんでいる。


モナリザをめぐる話である、と大きなテーマを設定して しまっており、戦う相手が明確である点で今後の展開が窮屈になる 可能性もあるが、人気が出るようであれば話を寄り道させても 良いのでは。ただそうすると主人公たちの犯罪色をどこまで消せるかを 気にしないといけなくなってしまうのかもしれないが。個人的にはフィクションにその手の倫理を持ち込むべきではないと思うがラウド・マジョリティはそういうことに五月蝿い場合が多々あるから…。


【データ】
ヨシカゲ
モナリザマニア
【発行元/発売元】集英社 (2019/1/4) ※電子版で購入
■評価→ B(佳作) ■続刊購入する?→★★★★
■購入:
amazon→ モナリザマニア 1 (ジャンプコミックス)

藝術大学を目指し、絵を勉強する青年・カワセミ。だが才能は認められず、浪人の日々を送っていた。ある日、カワセミが描いた絵を処分していると、フリーで画商をしているというメルに出会う。そして次の瞬間、メルから提案されたもの……「贋作を描く気はねぇか?」メルが見出すカワセミの思わぬ才能とは…!?



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【オススメ】 昌原光一/こはぜ町ポトガラヒー 〜ヒト月三百文晦日払〜


こはぜ町ポトガラヒー ~ヒト月三百文晦日払~ (1) (ビッグコミックス)

■【オススメ】江戸長屋人情もの、 だが一捻り二捻り。

貧乏長屋を舞台に、おおらかな大家と店子の 交流を描く作品。なのだが、その大家がお武家様であり、 屋敷の敷地に長屋があるというのが異色。


更に、その大家は御家人の長子だが家督を弟に譲り部屋 住みとなったという設定。当然、そこには事情がある。


わけありも受け入れるその長屋に紹介されてきたのは、 石川島帰りの科人の女性。その彼女とのロマンス めいた展開もあり。過去があるがゆえの哀しさもあり。


人の機微がわかる人々の行動が切ない。 酸いも甘いもかみわけた人情ものの一品。


【データ】
昌原光一 (まさはらこういち)
こはぜ町ポトガラヒー 〜ヒト月三百文晦日払〜
【初出情報】ビッグコミックオリジナル増刊号(2017年〜2018年) 【発行元/発売元】小学館 (2018/12/27) ※電子版で購入
■評価→ B(佳作) ■続刊購入する?→★★★★
■購入:
amazon→ こはぜ町ポトガラヒー ~ヒト月三百文晦日払~ (1) (ビッグコミックス)
ここは、昨日の涙も笑いに変わる場所。 華のお江戸の片隅に、小さな長屋がありました。 侍大家のこの長屋、住人は揃いも揃って“ワケあり”者ばかり。 過去の罪、大切な恋の終わり、親子のすれ違い、女の生きる道、自分の正義を貫くこと…… 苦しくって難しいこと全部、ここの“人情”がくるんでくれる。 優しさ以上、お節介未満―― ちいさな長屋の大きな人情、とくとご覧あれ!


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【オススメ】 五郎丸えみ/あぐりとたね


あぐりとたね 1 (マーガレットコミックスDIGITAL)

■【オススメ】いろいろと計画をたててそのとおりに実現させてきた ヒロインが、今まで知らなかった野菜の魅力に惹かれていく。

イベンターとして優秀なヒロインは結婚間近。仕事も人生も 計画を立てて綿密に準備してそのとおりに動き実現させてきた。 そんな彼女に想定外の事態が訪れる。ブライダルチェックで受けた 診察の結果、自然妊娠の確率が極めて低いことがわかる。 それを受けた婚約者は、親に泣きつかれ、結婚を考え直そうと 言い出すのだった。


そんなヘビーな話。ヒロインが婚約破棄となるにあたり、 周囲も彼女が普段から暴走しがちで他人のことを考えていない、 など揶揄する声も出てくる。一方で彼女の心境も変化があり、 また結婚前提で組み立てていた予定がなくなったことで 自由に使える時間も出来た。


そこでその心と時間を費やすことになる相手が、野菜。 あまり得意でなかった野菜のイベントをすることになり、 しかも上から目線でダメ出ししてくる男性も絡む。


知らなかった野菜の世界にはまっていくのだが、 イベントを一応成功させつつも、それでは次につながらない、という 体験を経た上でヒロインが農業と野菜の世界に惹かれていく 展開は上手い。


あとから講釈を垂れる青年に対して、 「大体そんな語り今初めて聞きましたけど!?」「そんなに言いたいことあるなら企画段階で語ってよ!!」先に 言ってくれなければわからない!と返しているのは、 確かにそのとおり。そこに自身のプライベートを重ね合わせているのは、ちょっと無理がある構成だとは思うが。


この手の話は主人公が農業にのめり込みがちだが、本作は 主人公の設定上、普通に農業もの野菜ものにするつもりではないだろうから、そのあたりに期待。


【データ】
五郎丸えみ (ごろうまるえみ)
あぐりとたね
【発行元/発売元】集英社 (2018/12/25) ※電子版で購入
■評価→ B(佳作) ■続刊購入する?→★★★★
■購入:
amazon→ あぐりとたね 1 (マーガレットコミックスDIGITAL)

中村あぐりは、周囲から“計画魔”と呼ばれるほど何事も計画を立て、その通りに実行してきた。そうすれば上手くいくし、幸せになれると信じていた。だけど、結婚を目前に控え受けたブライダルチェックで思いがけない事態に直面する。妊娠が難しいと分かったあぐりの手からするすると大事なものが滑り落ちていく中、今まで知らなかった「野菜」の魅力が、あぐりの世界を広げていく――!


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【オススメ】 とりのなん子/星の翅


星の翅(1) (モーニングコミックス)

■【オススメ】 70年代のSFもの少女漫画テイスト。

氷の海に浮かぶ結晶都市に住む人たちの話。 彼らは、スノードーム、と呼ばれる超巨大彗星に住んでいる。


資源採掘のため捕獲され人類が移住した星。 そこで生まれた世代が主人公。 地球への移住を憧れる者と、重力の少ない 星で生まれた自分たちにはその可能性がないと 知る者。その幼馴染の二人にフォーカスしたお話。


「宇宙兄弟」のムックに2011〜2012年に掲載された、 足し上げても60ページに満たない中編。それが 電子版としてまとめて切り出されてリリースされた。


尺が尺だけに習作という印象を否めないが、 内容は壮大なラブロマンス。 この雰囲気は好みで、著者のこういうSFチックな作品も読んでみたい。


【データ】
とりのなん子
星の翅
【発行元/発売元】講談社 (2018/12/21) ※電子版で購入
■評価→ B(佳作)
■購入:
amazon→星の翅(1) (モーニングコミックス)
「あたしが地球に連れてってあげる」。…これは〈スノードーム〉と呼ばれる超巨大彗星に生まれた少年と、彼に本物の海を見せたかったガールフレンドの、ある「夏」の冒険物語。オールカラーで描かれる、美しく謎に満ちた異世界の風景の中、天才少女の一か八かの脱出計画が動き出す…! 北東北・生き物エッセイ漫画『とりぱん』の作者が、『宇宙兄弟』のムックで連載した幻のSF漫画、初の書籍化。


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鉄本
【オススメ】 とりのなん子/とりぱん

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【オススメ】 八ツ目青児/LOST


LOST 1 (芳文社コミックス)

■【オススメ】ハードボイルドものの変形、かな。 雪国で人探しをする刑事の話。

雪国にやってきたのは人探しをしている刑事。 バーで見知った郵便局員をハブにして、 様々な地元の人と接し、捜査を広げていく。


刑事が探しているのは、その土地出身の軽犯罪者について。 彼は、その軽犯罪者が、名乗っている人物ではない、 と直観で信じている。


そんな話の背景に、姓名偽証罪は重罪だという設定、 さらに失姓孤児とか無姓児とかいう用語が出てくる。 フルネームを持つものと持たざるものとがおり、 それが社会的に大きな差となっている社会、 という作り込まれたハードの上で展開される物語。


雰囲気はあるが話自体はあまり展開しないままに 一巻が終わる。ただしじっくりと描かれた分、 独特の世界観は伝わってくる。今のところ雰囲気もので、 何を描きたいのか、 描こうとしているのかは定かではないが、 それを知りたいので続刊を読んでみたい。


【データ】
八ツ目青児 (やつめせいじ)
LOST
【発行元/発売元】芳文社 (2018/12/14) ※電子版で購入
■評価→ B(佳作) ■続刊購入する?→★★★★
■購入:
amazon→ LOST 1 (芳文社コミックス)
求めるのはある男の人生。警察官であるヤギは以前逮捕した男・ドリーに疑問を持ち、彼を捜すため雪に閉ざされた町へとやってきた。よそ者を拒むその町で知り合った郵便配達員や失姓孤児である青年の協力を得て調査を始める…


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【オススメ】 鈴木有布子/ツールボックス・コンプレックス


ツールボックス・コンプレックス (ウィングス・コミックス)

■【オススメ】母親の親心と呪縛とから 自分の人生に足を踏み出す三姉妹の話。 そこに道具箱というアイテムを絡めたのが ユニーク。

離婚した母親から、「誰に手を離されても 一人で立てるようになりなさい」として 道具箱を見せられた三姉妹。母と離れて暮らすようになっても 末妹は工具大好き人間に。


学校ではインフルエンザで出遅れて どのグループにも入れずにいたが、派手なグループの女の子と パートワークの組み立てロボットの雑誌を同時に手にとった ことから仲良くなる。彼女が購入するかわりに、 不器用な彼女にかわって組み立てをすることに。


友情ものかと思いきやそこを通り抜けていく展開に。 三姉妹連作オムニバスの一巻完結ものなので、 話は次姉、長姉と展開。からっと見せるが 案外悲恋もの。母親のかけたある種の呪いを 三姉妹がそのまま体現しているというのは 皮肉ではあるが、それぞれが新しい人生を踏み出そうとしている 点で前向きでもあり明るくもあるという魔法のような出来の作品。


【データ】
鈴木有布子
ツールボックス・コンプレックス
【発行元/発売元】新書館 (2018/11/24) ※電子版で購入
■評価→ B(佳作)
■購入:
amazon→ ツールボックス・コンプレックス (ウィングス・コミックス)
しっかりものの社会人・美咲(みさき)、あざとい大学生・美笑(みえみ)、気弱な高校生・美生(みお)。離婚した母から工具箱を見せられた三姉妹は、これがあればひとりでも生活が出来ると言われて育つ。その影響で、美生は派手グループの女子高生・若菜(わかな)のロボット作りを手伝ったり、美笑は脅されて付き合う事になった留年生・隼太(はやた)の眼鏡を治したり、美咲は長年の恋人・亮輔(りょうすけ)のリサイクルショップを手伝ったり。三人三様の恋の行方は……。胸がギュッとなる三姉妹のラブ・ストーリー!!


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