三原和人/はじめアルゴリズム


はじめアルゴリズム(1) (モーニングコミックス)

■数学の天才は変人である、という話。 アート系に変人が多いのは・・・一人でもなんとか なるからか。

生まれ故郷の島に講演に向かった老数学者。 テレビにも出ていた有名人であるが、 それは自身が年齢とともに能力に限界を感じたことから、 差し伸べられた手にこれ幸いと進んだ道だった。


そんな彼が廃校となったかつての母校に立ち寄ると、 自分が途中までしか解けなかった問題の式が完成していた。 他にも並ぶ式の数々。天才のようでもあり、まるで阿呆のようでもあり。そして、老数学者は、その式の数々を繰り出す 少年をその島で見つける。


天才少年を見つけた老学者が、数学者として最後の仕事と して彼を導こうとする話。題材としては珍しく、 数学、という絵として面白く見せるのが難しい題材を 漫画でうまく表現してはいるが、 構図としては天才スポーツ少年の発掘と同じ。 どこにユニークさを見るか見ないかで評価が分かれる作品である。


チームスポーツものだとこの手の変人は 受け入れられるかどうかで一悶着ある展開が基本。 一人でできるスポーツ系だと監督だの コーチだのの理解次第でのし上がっていく。 アート系も後者と同様。 変人ものは結果を出せば良いので、 学術系だとスポーツ系同様わかりやすくはあり、 描きやすいといえば言える。


となると、話もパターン化しやすい。 そこで作品の肝はキャラクターになる。 だがそこで、数学、という説明しなければならないことの 多い題材であることが邪魔をする。 とはいえ一巻ではそれを上手に回避して、 面白く見せている。2巻発売済→ はじめアルゴリズム(2) (モーニングコミックス)


【データ】
三原和人 (みはらかずと)
はじめアルゴリズム
【発行元/発売元】講談社 (2017/11/22) 【レーベル】モーニングKC 【発行日】2017(平成29)年11月1日発行 ※電子版で購入
■評価→ B(佳作) ■続刊購入する?→★★★
■購入:
amazon→はじめアルゴリズム(1) (モーニングコミックス)
老数学者・内田豊は廃校で出会った、小5の少年・関口はじめと。はじめは、数学において天才的な才能があった。内田は彼の才能に惚れて、彼を導いていくことを勝手に決心したのだった・・・。足す足す引く引くワクワクドキドキ。ワンダーボーイ、数字と一緒に世界を大冒険。数字を見るのが少し楽しくなる成長物語。数学と天才が嫌いじゃなくなります。



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田所コウ/彼女のやりかた


彼女のやりかた (トーチコミックス)

■三周くらい遅れていまどきユニークな絵柄に、 ほのぼの話かと思いきやちょいエロ乗せてくるという、 面白いけどどの辺の客層狙ってるのかな、これ。

女の人の働き方を描くオムニバス。 絵柄はいまどき珍しい昭和な感じのタッチで、 高野文子的というと褒め過ぎで、 長谷川町子的というとちょっと酷くいいすぎかもしれないが、 いっときならマガジンハウスあたりで ソフトカバーで出て、 何周か回ってこれもおしゃれ、みたいな 売りもありそうな類いの作品である。


で、その各エピソードのヒロインの働きっぷりだが、 自分を元気づけたりストレス解消したりするための 方策が、エロ混じりというオチ。 この絵でそういう展開ってのは面白いが、 しかし、誰得なんだろう?と冷静に思ってもしまう。 もっと高尚な感じだったりあるいは詩的だったりと、 より文芸チックに仕上げてくれると衝撃も強くて 良かったかもしれないが。うーん、 まぁ、エロネタ乗せなかったら、普通すぎる話 ではあるんだよなぁ・・・。 しかし最終話などいい話なのに色々台無し感というか、 無理やりすぎるだろう感もあり。


ところで。 著者は以前、パクリだなんだと難癖つけられ 騒動になったらしい。ということを今知った。 よほど斬新な内容ならともかく、 ありがちなコンセプトはかぶることもあるだろう。 上位互換になっていれば後から出た作品が 前の作品より評価されることも多々。


よく分からないのは、パクられようがなんだろうが、 パクられた側は先に世に出ているわけで、 これが雑誌を打ち切りになってその後に同じ企画が スタートして自分にカネが入ってこない、ってなら まぁ訴えるのも理解できるんだけど。 あるいは自分の作品が世に出ず、企画だけ パクられたって盗作なら当然ひどいよねって 同情もするが。 パクリは別にパクられた作品がそれで 売れなくなるってことはないわけで、 パクられた側が騒ぐ理由は 炎上マーケティング以外にいまいちよく分からなかったりする。


コンセプトのパクリなんていったら、 このブログも漫画レビュー本のパクリなんだし、 一方で後発企画もあってパクられているわけで、 とはいえそれは別に大したコンセプトじゃないからだしねぇ。 あ、だからといって丸パクリというかコピペ流用みたいなのは 無断転載による著作権侵害なので勿論ダメなわけで。 この辺区別つかない人もいそうなのが 世の中の面倒なところ。そういう人はこんなブログまで 読みにこなくていいのだけれど、実際、読まないで 伝聞やらキャッチだけ見てまとめサイト斜め読みして 批判非難してきがち。木をみて森をみずな感じで ヒートアップしてる人、多いしね・・・。


ちなみにパクリなんてしたことない、という潔白な作家 なんてのは世の中に存在しないので、 パクリだ!と騒ぐ作家は自分のこと 棚に上げ過ぎではっきりいって信頼できないし、 そういうことを言いはじめた作家はちょっと大丈夫かなと いろいろ心配。本当はプロは SNSやらブログやらを自分で発信しちゃいけなくて、 マネージャー相当の人が発言を管理したほうがいいと 思う。 まぁアーティスティックな世界は 変人奇人が佃煮にするほどいるわけで。 読者としては作品だけ拝見するのが 幸せ関わりかたなのだろうなぁと思っている。


【データ】
田所コウ (たどころこう)
彼女のやりかた
【初出情報】トーチweb(2015年〜2018年) 【発行元/発売元】リイド社 (2018/4/6) 【発行日】2018(平成30)年4月12日初版第1刷発行 ※電子版で購入
■評価→ C(標準)
■購入:
amazon→ 彼女のやりかた (トーチコミックス)
日々の中にふと現れる小さな悩み、どのように解消しますか? ひょっとしたらあなたの身近にいるあの人は、意外な解決法を持っているかも… 少しの勇気と冒険で生活に魔法をかける、彼女たちの“やりかた”をご紹介します。


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ふなつかずき/土下座で頼んでみた


土下座で頼んでみた (MFC)

■すごいアイディア。だけれども、まぁ、漫画っていう漫画じゃないかな。江口寿史のなんとかなるでショ!を思い出した。

物語になっているのかと思いきや、 1シチュエーション、 土下座する男視点で、 1ページ1コマ、4ページ使って一段落、 という要するに贅沢な4コマものである。 しかも、エロオチ。 どこぞのアダルトビデオみたいな話ですな。


各シチュエーションの頼み込まれる女の子の バリエーションが豊かなのは見事。 まぁ、それだけではあるが、 イラスト集と思えばまぁ良いのではなかろうか。


いずれにせよ、 土下座しているシーンなどは含めず、 主人公自身を出さなかったのは名案。 とはいえ、これをコミックスで出すのか、 という思いはあるが・・・。


【データ】
ふなつかずき
土下座で頼んでみた
【発行元/発売元】KADOKAWA / メディアファクトリー (2018/3/30) 【レーベル】MFC 【発行日】2018(平成30)年3月30日発行 ※電子版で購入
■評価→ B(佳作)
■購入:
amazon→ 土下座で頼んでみた (MFC)
ツイッターでバズッた話題のマンガ!  断りきれない女子たちは土下座をすれば、 エッチなお願いも聞いてくれる!? 女の子たちの胸や下着が見られるお楽しみページはすべてフルカラーで掲載!!



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三島衛里子/なんしょんなら!!お義兄さん


なんしょんなら!! お義兄さん(1) (サンデーGXコミックス)

■さらっとしたショート。 何も設定知らずに読んだので 意外性があって面白かったが、 でも著者の前作知ったほうが楽しめるかな。 「 高校球児ザワさん 」の後日譚。

念願のマイホームを買った 新婚さんの家に、 どういうわけか義兄が入り浸るのだった。


義兄に気を使いつつ、 向こうはなにか全く気にしてなさそう、 という主人公にとってはもやっとした 状況を切り取って描くだけの漫画。


シュールな感じ、と思いつつ、 主人公が義兄のためにプロ野球の結果をやたら気にするな、 と思ったら義兄は先発ローテーション投手。 でもって名字は都沢・・・ん?主人公の嫁は要するに 「 高校球児ザワさん 」のヒロインということか。


その割に嫁は殆ど出てこない・・・ 敢えて出さないのかと思ったら、 話が進むにつれて普通に出演シーンが増える。 主人公も実はプロ野球選手であるとか、 色々後出しで話は出てきつつ、 夫婦と義兄以外に人物が出ないまま展開しているのは 面白いもののネタ切れ感は否めず。 まぁ飄々とした内容は憎めないし空気感は好きだけれども。


【データ】
三島衛里子 (みしまえりこ)
なんしょんなら!!お義兄さん
【初出情報】月刊サンデーGX(2017年〜2018年) 【発行元/発売元】小学館 (2018/3/19) 【レーベル】サンデーGXコミックス 【発行日】2018(平成30)年3月24日初版第1刷発行 ※電子版で購入
■評価→ C(標準) ■続刊購入する?→★★★
■購入:
amazon→ なんしょんなら!! お義兄さん(1) (サンデーGXコミックス)
プロ野球義兄弟のバディホームコメディー!
傑作高校野球漫画『高校球児ザワさん』の三島衛里子が新たに描くのは…プロ野球の世界!
お義兄さんは某プロ野球チームの先発投手で1億円プレイヤー。 お義兄さんの妹と結婚した、ワシの新婚スィートホームに入り浸るようになり…!?
全く新しい野球漫画がここに誕生!!プロ野球バディコメディー!!


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六花チヨ/理想の家族のつくり方


理想の家族のつくり方 1 (マーガレットコミックスDIGITAL)

■ 妊活する妹と離婚を考える姉。 なかなかにディープなテーマに取り組むなぁ。

何をやっても上手くできる姉とできない妹の双子。 その妹が主人公。産婦人科で彼女は、 卵子の数が少ない、と言われ、双子の姉は子供生んでる のに、と聞くと個人差があるし、 大病や過激なダイエットなどで著しく減ることもあると。 そう言われて心あたりに気づく彼女。そんなときに、 双子の姉が子供を連れて来る。


何もこんな時に、と思う妹。卵子の数は想定よりも少なすぎ、 専門家を紹介されるもどこかで諦めることも必要だと諭される次第。 そのことを楽天的な夫には告げきれず、しかし それを姉に見透かされ、正直に言わないと夫婦の間にミゾができる、 妻失格だよと指摘される。が、そんな姉は、実は旦那が浮気をしており、離婚を考えているのだった。


「正しい生き方の人がいるとつらい/自分が よりダメに思えるから」 という妹の生き方は正直しんどい。人と比べてどうこうするような生き方は、 自分自身の人生ではないのだが。割とのんびりで天真爛漫に見える妹がそういうことを考えているというのが全般的には信じがたいが、双子の姉相手だからそう思うという設定はよく分かる。


ところで妹の妊活に関しては、夫は理解というか心がフルオープンな系のよくできた人物なので、彼女がよく話し合えばいいだけ。妊活の大変さ、ということは描かれつつも、どこで折り合いをつけるか、が焦点になる。一方で姉のほうが外面は良いが浮気しDVも振るう夫ということで、でもでもだってな状況から離婚を決意しつつ、実の親に義理の親などと向き合うたびにそれが障害となる、という展開。


妊活と離婚とが同時並行で語られる、という異色作。 結構お腹いっぱいな感もあるが、細かい点をしっかり 問題を提示しつつしっかりと描いてくれるのであれば、 佳作となるだろう。


【データ】
六花チヨ (ろくはなちよ)
理想の家族のつくり方
【発行元/発売元】集英社 (2018/3/23) ※電子版で購入
■評価→ B(佳作) ■続刊購入する?→★★★
■購入:
amazon→ 理想の家族のつくり方 1 (マーガレットコミックスDIGITAL)
双子の姉妹・ウメとサクラ。優秀な姉・サクラを前にするとウメのコンプレックスはうずくばかり。そんななか、妊活中のウメはある宣告を受け…!?


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六花チヨ/レッドポイント

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菅原敬太/隣町のカタストロフ


隣町のカタストロフ : 1 (アクションコミックス)

■天変地異パニックSFもの。 構成は面白いが、絵とキャラクター設定はクセあり。

引きこもっていた青年が部屋で大きな揺れに遭遇する。 大変な地震だな、と思い外を見ると、空間の上下が変わる 天変地異が起こっていた。


不可思議な状況の起きるSF的パニックもの。 どうもこの町周辺だけが、天に向かって引っ張られているらしい、 という状況が追って明らかになる。事態が起こっているのは 一部である、とする限定の仕方はフィクションにおいて重要。


だが、絵は魅力的に見えず。特に男性キャラは微妙。 使い捨てキャラが前半には多いからか? そんなキャラクター絵にもかかわらず、 背景を描くでなくバストアップのコマが多く、 かつそこにダイアローグだけでなくモノローグも書き込むので、画面が狭い狭い。


一話目の展開を見るとこれは読み切り想定だったのかしらんとも 思う切り上げ方で、次の話も同じ状況を利用した読み切りホラーの よう。パニックホラーにありがちな、 クズな人物が続々と出てくる展開は、読んでいて楽しくなる ものではない。動画ものならまだしも、漫画のような 時間軸が自動的に動いてはいかない スティルものの著作物では、不純物は読み手の中で澱のように 沈殿する。それがいいのか悪いのか。


後半は学校舞台でどう隣町まで脱出するか、 という展開となりサスペンス色が増す。 境目では次元というか重力の捻れが生じていて 安全地帯には逃れられない、という条件が付加され 容易には出口が示されずに一巻終了。 一方で事前に何が起こるかを知っていたらしい人物も 浮かび上がり、真相はなにか、という興味に 軸がシフトする形になっていく。


かように構成は上手いのだが、 キャラクターの設定が安易なのと絵に難があるので 続刊購入を考えてしまう。いや、絵に難があるが ゆえの設定なのだろうけど、うーん。 2巻発売済 →隣町のカタストロフ : 2 (アクションコミックス)  そして3巻まもなく発売→ 隣町のカタストロフ : 3 (アクションコミックス)


【データ】
菅原敬太 (すがはらけいた)
隣町のカタストロフ
【初出情報】漫画アクション(2016年〜2017年) 【発行元/発売元】 双葉社 (2017/4/28) 【レーベル】ACTION COMICS 【発行日】2017(平成29)年4月28日第1刷発行 ※電子版で購入
■評価→ C(標準) ■続刊購入する?→★★★
■購入:
amazon→ 隣町のカタストロフ : 1 (アクションコミックス)

5月28日、午前10時12分――「地変天異」発生。その瞬間、街は空と大地を逆さにした。摂理を失った世界で、夢も希望も愛も悲しみも、人々の日常は音を立てて崩れ落ちる――。『走馬灯株式会社』『鉄民』の実力派が描く、驚愕のサバイバルミステリ!!


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はくり/幸色のワンルーム


幸色のワンルーム(1) (ガンガンコミックスpixiv)

■誘拐された女子中学生は、誘拐犯に感謝するのだった。 それは「生まれて初めて私を好きと言ってくれた人だから」

実写ドラマ化されるというので物議を醸しそうな一作。 個人的には好きになれずに発売当初スルーしたが、 この機会にレビューをアップしておきたい。


誘拐犯はストーカー。彼女の写真を前からとりためていた。 「本人に嫌われればストーカーもやめられると思って/ 嫌がられることを前提に誘拐した」という、 「本当に誘拐する気はなかった」などと言い訳混じりも 自己中心的な発想の人物である。一方、誘拐される女子中学生は、 誘拐犯に笑顔で感謝した。相手が異常であるのはわかる、 が、その相手のほうが今まで生きてきた環境よりも マシだから、その決め手が「好きと言ってくれた」からだという、 なかなかヘビーな設定である。


テーマ設定は重い。問題は、それを描くには構成も筆力も 弱すぎるのではないかという点にある。 ピクシブレーベルでネット発の作品でありコマ割りは4コマ漫画と見紛うよう。背景の設定は一通りあり用意はあるのだろうが 一巻時点ではほぼ描かれず、なので誘拐という話を甘い人工甘味料 でコーティングして商品として提供されたできの悪い駄菓子のように 見える。


ストックホルム症候群、ともまた違うのだろうが、この手の誘拐犯に恋をする的な重いテーマを描く際には作品の序盤で相応の助走期間が必要だろう。それと、主人公ふたりの内心の声、モノローグが多いが、本来モノローグというのは表面で展開されている事象とは別のことを秘めている場合に敢えてそれを暴露するという場合に使うべきもので、言わずもがなのことをモノローグ化するのは日本映画やケータイ小説の悪しき表現手法である。


ヒロインが、親に虐待され、痣や傷跡をみた同級生にいじめられ、教師には性的いたずらまがいを受け、ネグレクトされた結果か中学生としては幼すぎ世間を知らず買い物さえろくにできない、という四面楚歌の状況での救いが誘拐犯だったのだ、という皮肉はフィクションの設定としてなしではないのかもしれない。ただしそれは、強制猥褻から始まる恋もある、というような 話に聞こえる。だから規制すべき、とは思わないが、丁寧に作る必要があって、本作には本気の取り組みがあるようには見えない。ちなみに本作は出版社を通じてメジャー流通されているので、著者の問題というより版元の問題だと考える。


ところでネットでは、実在の事件を想起させる云々という話があった。しかし本作は良くも悪くも、 具体的な描写に乏しいので、読んだところで、ああ、あの事件ね、と想起することはなかった。逆に、本作では家庭や学校に問題があると提示しているので、実在の事件に似ている、と騒ぐことは寧ろその実在の事件の被害者回りに迷惑がかかるのではないか?と心配になる。なおフィクションは、それを意図しているのでない限りは、ノンフィクションの事件事故人物を想起させてはならない、と個人的に思っているので、ネット上での本作に対する懸念の根本思想には同意である。モデルから離れてフィクションを展開できないのであれば、その人はフィクションなど作ろうとすべきではない、関わるべきではない。


ちなみに。本作のようなフィクションが犯罪を助長する可能性については、それは言いがかりだと思っている。犯罪を助長するとすれば、それは作り物よりも現実である。ニュースやワイドショーで犯罪報道がある限り模倣犯はなくならない。フィクションは現実にできるかどうかは別だが、ニュース報道は現実にあったものであり実現可能なことである。ワイドショーでは微に入り細に入り報道されるものもある。中には犯人が逃走中の事件もあり、それはつまり罪を犯しても逃げおおせるというメッセージを発しているわけである。フィクションに罪があるとするならば、ノンフィクションや報道はより重罪である。なおニュースは珍しいからニュースになる。日常的に行われている犯罪は報道として取り上げられないが、それはリアルに目にすることにより日常茶飯事なんだというメッセージを送ることで犯罪を助長する。つまりは、リアルのほうが人間の行動への影響度は高い。その点で、本作のような作品が世に出ようが、それによって犯罪を助長するということはない。そういう報道がなされた場合は、フィクションに責任をなすりつけたい、そういうストーリーが良いと思う報道なりノンフィクションなりの構成作家の頭の中身が現れているだけである。


つまり作品の社会に与える影響云々は、まぁ、騒ぎたい人が騒いでいるだけでマッチポンプなのでどうでも良い話である。犯罪被害者の人は読んでいて良い気分にならないだろうが、どんな事件事故を扱ったフィクションもそれが自身に少しでも似ていると気に障る部分はあるだろうからモデルであることが確実である場合以外は黙っていていただきたい。 ということを踏まえつつ、本作は作品としてあまり面白くなく読後感も良くない。不条理ゲーム系が現実と切り離したものとして展開していたその不快さを、現実に近い所で展開してしまったのが本作である。ある種のタブーであるのだが、それをタブーと考えていない気軽さ稚拙さで 描いているように見える。そんな本作を、実写ドラマ化するという暴挙に出たのはいったいどこなのか。ある程度真摯に取り上げた映画『ルーム』だってそうとう胸糞悪かったわけだからねぇ・・・。


【データ】
はくり
幸色のワンルーム (さちいろのわんるーむ)
【発行元/発売元】スクウェア・エニックス (2017/2/22) ※電子版で購入
■評価→ D(問題) ■続刊購入する?→★
■購入:
amazon→幸色のワンルーム(1) (ガンガンコミックスpixiv)

薄幸な少女は誘拐されて“幸せ"を初めて知る。
その日、少女は誘拐された。 しかし、それは少女にとって一縷の希望にかけた生活の始まりだった。 少女は誘拐犯に結婚を誓い、誘拐犯は少女にたくさんの“幸せ"を捧ぐ。 被害者と誘拐犯の関係なのに―――どうしてこんなに温かいの? pixiv&Twitterの超話題作が待望の書籍化!!! 半分以上が本書限定の描き下ろしエピソードを収録!!!



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