【オススメ】 ヨネダコウ/Op−オプ−夜明至の色のない日々


Op−オプ−夜明至の色のない日々(1) (イブニングコミックス)

■【オススメ】ハードボイルドな保険調査員(オプ)もの。 バディ役の設定がユニークで秀逸。

特殊な案件を引き受ける保険調査員が主人公。 持ちかけられるのはモラルリスク案件。 保険会社に保険金の支払い責任がない「無責」 であると証明できれば成功報酬も上乗せされる。 だが主人公は無私無欲、情けもなければ狡さもなく、 計算も忖度もしない。なのでうまく儲けることはできない反面、 周囲の人に信用されていく。


彼だけでも充分面白くなりそうな話だが、 そこに追加の人物あり。 彼の前職は刑事らしく、 現職の人間とも繋がりがあり、 その人物から高校生の少年の世話を頼まれる。 少年は彼にはぞんざいな態度をとるが、 それは彼が特殊だから。 共感覚をもった少年には人の感情に色がついて見えるが、 主人公だけは無色に見え、それが気味悪いのだと。 つまり主人公は嘘をつかないし怒りもしない。 ように見える。


痛覚がない主人公と、共感覚を持つ尊属殺人の 加害者である少年とのバディもの。 事件の推理を絡めつつ、旧友とのサドマゾ的 漫才なやりとりの魅力もあり、その辺は BL的な誘い水でもあり。 主人公の子供は亡くなっており、 生きていたら少年と同い年である、という 話も出てきて材料山盛り。 その上で、普通に依頼された事件の 真相を解明していくエピソードが展開される。


非常に上手い。これだけうまければ、 エピソードを巻またぎするまでもなく、 一巻を読んだ者は続刊を買いたくなる。


【データ】
ヨネダコウ
Op−オプ−夜明至の色のない日々
【発行元/発売元】講談社 (2018/1/23) 【レーベル】イブニングKC 【発行日】2018(平成30)年1月1日発行 ※電子版で購入
■評価→ A(絶品) ■続刊購入する?→★★★★★
■購入:
amazon→Op−オプ−夜明至の色のない日々(1) (イブニングコミックス)

夜明至(よあけいたる)、バツイチやもめの38歳。職業、フリーの保険調査員。ある日彼のもとに持ち込まれた2つの依頼。それは「銃暴発事故の保険調査」と「ワケアリ少年・玄(くろ)を預かること」。玄は初対面から夜明に嫌悪感を示し、予期せぬ同居は最悪の幕開けに…。思うように調査も進まぬ中、玄の“一言”が事態を一変させる。夜明にとって玄の存在は光明となるのか――?保険調査で「嘘」を暴く新感覚ミステリー、開幕!



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【オススメ】 山口つばさ/ブルーピリオド


ブルーピリオド(1) (アフタヌーンコミックス)

■【オススメ】熱い美術もの。 スポーツ漫画のノウハウで他ジャンルを描く のは一つの正解。

遊び歩いて飲んだりタバコを吸ったりするような 金髪のDQN高校生、だが彼は成績優秀、 人懐っこく誰かを否定したりすることもしない。 ただし、ひとりだけ、幼馴染の(注記:2巻を読むと高校で知り合った様子) 同級生の 美少女・・・ならぬ女装っ子だけとは 口喧嘩する仲だった。


といっても別にLGBT話が始まるわけではない。 この女装っ子が美術部で、選択授業をとっていたことから 課題が頭にひっかかる。

「俺にとってテストの点を増やすのも 人付き合いを円滑にするのも/ノルマをクリアする 楽しさに近い」
ただ、
「クリアする為のコストは人より多くかけている/ そしてそれが結果になっているだけのことなのに/ みんなが俺を褒めるたび虚しくなる/この手ごたえの なさはなんなんだ」
そして、日本代表が勝って盛り上がるが、 その感動は誰のものか。他人の努力で酒を飲むのか。
「これは俺の感動じゃない」


では自分の感動はなにか。ということで、 自分の思いを美術の課題に乗せて表現することにする。

「好きなものを好きっていうのって/怖いんだな・・・」
でもそれが伝わったとき、彼はとても嬉しかった。 美術は文字じゃない言語である。その表現の広さに、 彼は自分がやりたいことがここにあるのではないかと思ったのだった。


この作品は、手ごたえのなかった努力家の天才に、 歯ごたえのある自分向きの素材が見つかる話。 彼を掻き立てる先輩がいて、それ以上に、 うまく意欲をかりたてる先生がいる。 メンターがいないと何事も始まらないので、 環境は大事。 先生の

「頑張れない子は/好きなことがない子でしたよ」
という言葉は強烈。
「好きなことに人生の一番大きなウエイトを 置くのって普通のことじゃないでしょうか?」


家計の状況から私立大学は無理、そんな主人公が 美大を目指す、つまりは芸大一択。ある種の無理ゲー。 でも頭がよく成績に結びつけるだけのセンスがあり、 つまり勉強や上達する術を知っている。 要するに、才能あるもののスポーツ漫画のような 構図になっているところが面白い。


そして家の問題も、彼がどう説得しようかと考えあぐねている 間に両親は進路相談の紙を見て、でも頭ごなしに否定せず、 息子の本気度に母親も覚悟を決める、 という展開になっており、それを主人公との対話シーンなしに 済ませているところは上手い。(注記:2巻を読むと若干母親からの 絡みがあり、んー?そういうシーンを作るのかぁと若干の違和感。 相談してくれなかったのが寂しかった、的なまとめにしてさっくり切り上げてはいたが・・・)


美術やってた人なんかにはどう思われるのかわからないが、 外野の人間が読むにはこれはとても面白い。 なんでもできる人がうまくできない、 けどそこが面白い、ということに突き当たったという 幸せなお話である。 続刊発売済→ブルーピリオド(2) (アフタヌーンコミックス)


【データ】
山口つばさ (やまぐちつばさ)
ブルーピリオド
【発行元/発売元】講談社 (2017/12/22) 【レーベル】アフタヌーンKC 【発行日】2018(平成30)年1月1日発行 ※電子版で購入
■評価→ A(絶品) ■続刊購入する?→★★★★★
■購入:
amazon→ ブルーピリオド(1) (アフタヌーンコミックス)

成績優秀かつスクールカースト上位の充実した毎日を送りつつ、どこか空虚な焦燥感を感じて生きる高校生・矢口八虎(やぐち やとら)は、ある日、一枚の絵に心奪われる。その衝撃は八虎を駆り立て、美しくも厳しい美術の世界へ身を投じていく。美術のノウハウうんちく満載、美大を目指して青春を燃やすスポ根受験物語、八虎と仲間たちは「好きなこと」を支えに未来を目指す!



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【オススメ】 小玉ユキ/ちいさこの庭


ちいさこの庭 (フラワーコミックスα)

■【オススメ】小さな妖精との交流譚。 珠玉の一作。幸せな結末に泣く。

ちいさこ、という森に棲むといわれる 小人というか妖精にまつわるお話。 新居の中庭に、そのちいさこはいた。 ただし親子4人でそれが見えるのは、 妹だけだった。


これで、中庭を潰す、潰さない、 という話が展開されるのが第一話。 なお、ちいさこは、言葉を喋れるし、 人里に住んで長い者は文字も読める。 つまり、見える人間とはコミュニケーションがとれる。 一方で子供は児童文学で ちいさこを描いた人気シリーズがあり、 それでちいさこのことを知っているのだった。


一話目はプロローグ。二話目では、 ちいさこの見える条件を明確に定義。 子供なら見えるわけではない。 人間は恋をするとちいさこが見えなくなってしまう、 そして一度見えなくなるとそれっきり、なのだと。 つまり、恋していない人間にしか見えない、と。 二話目はその設定を使った人間側のお話。


三話目は人間とちいさこの間での恋愛めいた交流を 描くが、四話目は時代を遡り、武士のいる頃を 一話目と同じちいさこを中心に綴る。ただし 夫婦なのに妻にはなぜかちいさこが見える、 という仕掛けを作り、話を展開する。


その四話も泣ける話だが、さらには最終話で 児童小説の著者のエピソードとなり、 小説はこの人物が 自分の体験したことを元に描いているのだ、 と明かされる。ここで、 「人間の中で我々ちいさこの姿が見える者は 恋を知らぬ者か死を迎えようとしている者 どちらかしかいない」と定義される。 なんか最後になって後付設定出てきたぞ、 という話もないではないが、いや、 この設定でもってクロージングに向かう エピソードは、素敵で素晴らしく、 四話目でうるうるとしてきた目を 決壊させるにふさわしい出来映えである。


【データ】
小玉ユキ (こだまゆき)
ちいさこの庭
【初出情報】flowers(2017年〜2018年) 【発行元/発売元】小学館 (2018/2/9) 【レーベル】flowersフラワーコミックスα 【発行日】2018(平成30)年2月14日初版第1刷発行 ※電子版で購入
■評価→ A(絶品)
■購入:
amazon→ ちいさこの庭 (フラワーコミックスα)
ちいさこ"と人が紡ぐ、大人のための童話
森に棲むといわれる“ちいさこ"たち。絵本好きな少女、恋愛小説家と編集者、引きこもりの男子中学生……生きる時代も性別も立場も違う人間たちが“ちいさこ"に出会い−−?“ちいさこ"と人間の不思議な体験が詰まったファンタジックオムニバス。


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【オススメ】 田村由美/ミステリと言う勿れ


ミステリと言う勿れ(1) (フラワーコミックス)

■【オススメ】皆が絶賛するのも尤もな一風変わった 推理もの。小学館作品なので電子版リリースに タイムラグがあり話題に乗り遅れるのがもどかしい。

小学館のコミックスは概ね電子版のリリースが 紙書籍版の発売より遅れたタイミングとなることが多い。 それが利益最大化になっているのならビジネスとして 正しいと思うが、書店優遇ということであれば ユーザー見えてないので大丈夫かと心配する。 まあいずれ街の書店が消滅すればリリースタイミングの 調整なんてのは過去の遺物になるのだろうが、 おかげで漫画は電子版のみで購入する ことにしている者としては小学館の漫画は買いづらい。 紙書籍の新刊リストでチェックしたときには、 まだ電子版で買えないので。最近は電子版発売時期が決まっており 予約も受け付けているのでボタン押しておけばいいことではあるのだが。 漫画の売上で電子版が紙版を越えたというデータが出たこともあり、 小学館も講談社同様、同発に踏み切ったほうがいいのではなかろうか。


という長い前フリは、本作が話題になっているなかで、 横目に見ながら、電子版はまだなのね、と思っていたからである。 2〜3週間もタイムラグあると、買い漏れするんですよ。 話題になっているときに即座に買い物かごに入れられないのは 機会損失である。特にこういう傑作については 出版社が足を引っ張ってどうする、と思いもする。


本作はユニークな推理ものである。主人公は一人暮らしの青年。 彼は人の心情を読むのに長けている。そんな人物が本領を発揮するのは、 警察にて、容疑者として取り調べを受ける場面。 冷静に自分の状況を判断しつつ、警察官それぞれの性格を見抜き、適切な アドバイスも授けつつ、自ら真相を見出そうとするのだった。


探偵という立ち位置ではなく、捜査する側ではなくされる側として 話が始まったのはなかなかに秀逸。内容としてはアームチェア・ディテクティブ、安楽椅子探偵ものに近く、主人公が推測したことを マシンガンのようにくっちゃべるというものであるが、 それをどう漫画に載せるか、という技術は素晴らしい。 人を入れ代わり立ち代わり配置できる取り調べという環境を うまく使い、絵としても飽きさせない空間を仕立てている。


でもこの設定だと続きものとしてどうするのか? と思っていると、件の取り調べで知り合った刑事が 主人公のもとへ訪ねてくる。なるほど探偵ものめいてくるのか、 と思いきや、彼はこれをスルー。しかし彼自身が事件に巻き込まれる 形で第二話は展開されていく。


まぁ、事件がないと推理ものには ならないので、探偵ものは奴が来ると事件が起こる状態になりがち だがそれを踏襲せざるを得ないのは致し方ないか。 とはいえ、面白いのは彼は事件の全貌が見えない中で、 わかる部分から読み解いていくから、であり、 そこが全貌を把握することありきの世の推理ものの成り立ちと 違うからだろう。


そして。主人公の発言には含蓄がある。これを、 ブログやらツイッターやらの発言のように 中軸に据えた作品とするのではなくて、 主人公に流れで語らせるものにとどめて 作品自体はより大きな構造を用意してその中の入れ子としているところが 上手い。主張の激しいキャラクターを、 フィクションの中に溶け込ませる仕組みが素晴らしい。 フィクションで大事なのは、セリフよりも、物語。 主張よりも、流れ。 全体として伝わってほしい何かがないのであれば、 作品として作る意味がない。 作品を作るということは、作品でなければ伝えられない何かがあるべき、 というかそうでなければ作品は作り上げることができないし、 そうでない作品は作品として面白いと感じてもらえない。 そんな当たり前のことを改めてしみじみと感じる逸品。


【データ】
田村由美 (たむらゆみ)
ミステリと言う勿れ
【初出】flowers(2017年、2018年) 【発行元/発売元】小学館 (2018/1/10) 【レーベル】flowersフラワーコミックスα 【発行日】2018(平成30)年1月15日初版第1刷発行 ※電子版で購入
■評価→ A(絶品) ■続刊購入する?→★★★★★
■購入:
amazon→ ミステリと言う勿れ(1) (フラワーコミックス)

話題沸騰★青年・久能整!ついに登場!!
『BASARA』『7SEEDS』の田村由美、超ひさびさの新シリーズがついに始動!! その主人公は、たった一人の青年! しかも謎めいた、天然パーマの久能 整(くのう ととのう)なのです!!
解決解読青年・久能 整、颯爽登場の第一巻!!
冬のある、カレー日和。アパートの部屋で大学生・整がタマネギをザク切りしていると・・・警察官がやってきて・・・!?
突然任意同行された整に、近隣で起こった殺人事件の容疑がかけられる。 しかもその被害者は、整の同級生で・・・。 次々に容疑を裏付ける証拠を突きつけられた整はいったいどうなる・・・???
新感覚ストーリー「ミステリと言う勿れ」、注目の第一巻です!!


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【オススメ】 杉谷庄吾【人間プラモ】/映画大好きポンポさん


映画大好きポンポさん (MFC ジーンピクシブシリーズ)

■【オススメ】映画の愛に溢れる、元気の出る作品。

こちらも一巻完結ながら マンガ大賞2018ノミネート 作品。アニメ製作会社で深夜アニメの企画として 作ったものを漫画にして公開してみた、という 経緯からして珍しい。


内容は、先に紹介した 森田るい「我らコンタクティ」 同様、スーパーマン的な能力のある人の話である。 一巻完結で疾走感ある読み応え抜群の話に仕立てるには、 ある程度のチートというか事前準備が必要、ということか。 なにせ、大プロデューサーの孫がヒロインで、映画的な素養と 人脈とカネがある。でも作る映画はわかりやすいB級もの。 でもそうした映画できっちりと感動させる。


これは、映画とか物作りに興味がない人は、肩透かしにあった 感じになるのだろうなぁと思う。すべて持っている人の話じゃないか、と。 一応主人公は新人のアシスタント・プロデューサーではある。 ただ彼もお膳立てされているので成功が確実視されてるじゃないか、 的な。いや、お膳立てされた中で、作品を発表するほうが しんどいんだってば。主人公は、成功させなきゃいけない、 と八方美人になりかける。でも、そこで、自分が見せたいたったひとり のために作るべし、とアドバイスを受け、原点に立ち返る。 そのアドバイスで作れてしまうのが才能ではあるのだが。 そんな才能ある主人公だが、彼は自分には映画しかない、 と思い込んで追い込んでいるのだ。


という具合に、物語としてもよくできている。 これを面白く感じないというのは、ルーティンの中でベストを尽くす、 突き抜けた良いものを作る、ということに興味がないってことなのかもしれない。ちなみに本作は、各登場人物に好きな3本の映画をあげさせている。 これは、何を選ぶかが、自己紹介になっている。まぁSNSのプロフィール欄と同じですかね。シネフィルだとより楽しめる仕掛けになっている。 映画を知らなくても解説ページがあるのは親切。


私の場合、就職活動時に言っていた好きな映画3本は、 『トゥルー・ロマンス』に『ワイルド・アット・ハート』に 『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ』、 愛すべきバカ映画という括りでした。映画館を出て来る時の気分は たぶん同じになる映画じゃないですかね。トニー・スコットというかクエンティン・タランティーノ 、デヴィッド・リンチ、アキ・カウリスマキそれぞれ好きですが、本作は他とは毛色がやや違うのもまた良いところです。


で。本作は、1シーンを撮るために映画を作っているのだ、 というのが話の中心なので、なので、あのカラーページに 共感共鳴できれば、それでもう成功、っていう構成なんだと思う。 まぁ漫画とか本とかっていうのは映画とは違う感じもするが、 一巻完結本を買うのは映画見るのと近いのかな。


【データ】
杉谷庄吾【人間プラモ】
映画大好きポンポさん
【発行元/発売元】KADOKAWA / メディアファクトリー (2017/8/26) 【発行日】2017(平成29)年月日初版第1刷発行 ※電子版で購入
■評価→ A(絶品)
■購入:
amazon→ 映画大好きポンポさん (MFC ジーンピクシブシリーズ)

ポンポさんは敏腕映画プロデューサー。映画の都ニャリウッドで日夜映画製作に明け暮れていた。ある日アシスタントの“映画の虫”ジーンはポンポさんから突然「この脚本は君に撮ってもらうから」と監督に指名され!?



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【オススメ】 ワキサカ/アイちゃんとえほん


アイちゃんとえほん (ビッグコミックス)

■【オススメ】著作権フリーなパブリックドメインを活用したパロディだが不条理に落とさずきちんと話を回収する、こういうのは大好き。

アイちゃんが借りてくる絵本をせがまれて読み聞かせする父親視点のお話。 ポイントは、その絵本の内容がかっとんでいること。 絵本のパロディでもあり、それに適切なツッコミを父親が入れていく 漫才コメディでもある。なお、アイちゃんやアイちゃんのお母さんの キャラクターも結構とんでいてボケ役風味。


ももたろうに始まり、あかずきん、つるのおんがえし、おおきなかぶ、シンデレラ、わらしべちょうじゃ、しらゆきひめ、さるかにがっせん、ガリバーりょこうき が題材に。ちなみに描きおろしであるガリバー旅行記は原典が長いということもあり、それと内容を入れ子構造にしたことで逆につまらなくなってしまった感があるが、他の8編はすべて楽しめた。


描写が妙に文学的であったり現代的であったりするところから、 ずらしの笑いが生じていく内容はツッコミ待ちのボケネタという感じ。 ただ、それを不条理方向にオチを持っていくのではなく、 話全体を回収する方向の内容になっているのが凄い。 初手から桃太郎ネタの展開の仕方に感動。 全盛期の三谷幸喜芝居的というか。まぁそれくらい強引で綺麗すぎる まとめなのだが、三谷演劇より凄いのは、それを客観的に引いた視点で 冷静に評価する父親の存在があるからか。


こういう明るく人畜無害でバカバカしいものは当サイトの好みだが、 ビジネススキーム的にも、絵本、という誰もが知っていて誰でも 合法に利用できるものを活用した作品はアイディアとして素晴らしい。 本当は文化ってのはこういう形で、自由に先人の功績を 利用して転がしていくことで成長していくのだが、 著作権だ商標権だなんだで利権を要求する社会では 文化の成長はおそらく停滞していくことだろう。 著作権などは大企業に対する牽制として発生した権利のはずだが、 それを大企業が利用することで結果的に新たな文化の育成を 制限することになってしまった。ディ●ニーなんかのことを 言っているわけですが。彼らもよそから持ってきたものを転用 して商売にしてきたはずなんだけどねぇ・・・。


著作権フリー、パブリックドメイン的なものでないと 自由には使えない。著作物だとその辺は厳しい。 演劇芝居の類だと、まぁ案外どうにでもなってしまうわけで、 だからシベリア少女鉄道なんてものが成り立ったりするわけだが、 ああいうものが好物な身としては、 いろいろうるさい世の中はせちがらいと思いつつ、 一方で凡才でもメディアが持てる現代は、 単なる転載、海賊版でカネが稼げる時代でもあり、 才能あるものが文化的な制作物として使う場合には認めるべき、 的な線引が難しくつまりは実際の運用が困難な主張にならざるを得ず、 まぁ色々大変というか、でもこの状況が続けば文化は遅かれ早かれ 自滅するだろうね、と思いもする。


ともあれ、本作は面白かった。不条理展開で落として終わり、 という一時期天才たちが切り開き凡才がそれでいいのかと真似し始めたことで 飽きられていった類のお笑いと違い、 この手のオチのある展開は才能がない者には真似ができないので 飽和しようがない。 コメディセンスが非常に好みで、 著者の次作があるなら是非読みたい。


【データ】
ワキサカ
アイちゃんとえほん
【初出情報】スピリッツ増刊ヒバナ公式twitter(2016年〜2017年) 【発行元/発売元】 小学館 (2017/12/12) 【レーベル】ビッグ コミックス ヒバナ 【発行日】2017(平成29)年12月17日初版第1刷発行 ※電子版で購入
■評価→ A(絶品)
■購入:
amazon→ アイちゃんとえほん (ビッグコミックス)

みんなの大事な昔話が、えらいことに!
アイちゃんは絵本が大好き!今日も、お父さんに、幼稚園で借りてきた絵本を読んでもらいます。 「むかしむかしあるところに おじいさんとおばあさんが すんでいました。おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは4ストローク998CCのモンスターマシンに」…。 「こんにちは、あかずきんちゃん」「あっ! あなたが噂の変態ロリコンオオカミさん?」……。 どうやら、アイちゃんが借りてくる絵本は、なんだか、えらいことになっているようです。 そして、その背後には、様子のおかしい一人のおばあさんの存在が!!
えらいことになっている昔話のラインナップは、「ももたろう」「あかずきん」「つるのおんがえし」「おおきなかぶ」「シンデレラ」「わらしべちょうじゃ」「しらゆきひめ」「さるかにがっせん」「ガリバーりょこうき」! えらいこっちゃ!!



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【オススメ】 河内遙/リクエストをよろしく


リクエストをよろしく (1) (FEEL COMICS swing)

■【オススメ】 ラジオの話は 沙村広明「 波よ聞いてくれ 」 という怪作が今はあるからなぁ、と思って読んでいたが、 こちらはオーソドックスな傑作だった。

ポータブルなラジオを聴いている男性が主人公。 事務所に入りお笑いコンビを組んでいたが、相方が解散したい、 表に立つのはやめようと思う、と言い出した。 以来、彼はお笑いから足を洗うタイミングを失ったまま、 仕事は減りバイトの割合が増えていった。 そんなある日。彼の部屋の扉を叩き続ける音がした。


まぁ、来たのは相方で、スマホを使いこなせない主人公が 連絡もうっちゃっていたので結果シカトしている状態になっていた、 という前フリ。相方は自分が表に出るのは向いていないと 考えただけで、構成作家の仕事に自身の道を見出していた。 そして相方は、表に立つパートナーとして、主人公を使っていこうとする。


売れてはいなかったが、それだけの魅力が主人公にあるという話。 なのでこれは、才能を見出されて伸びていく類のスポーツものと 構造は近い。誰にでも受け入れられるし、話を回す天然の際があり、 華もある。なので注目していた業界人もちらほらと。 その天然さは作品で余すところなく描写されるので、 読者も納得しつくすほど伝わる。ここが本作の素晴らしいところである。


とはいえ 当人がまだ自身の魅力を認識していない。 なので周りが彼を盛り立てていこうとする。 これは、面白い。そんな彼を活かす場所として ラジオを設定したのは、いまのテレビの状況じゃあ 確かに説得力ある展開はしようがないからか。


フィクションならではの偶然を交えつつ、 転がしていく話は、これは佳作傑作で、 祥伝社作品なので電子版発売が遅い分 読むタイミングを失っていた。 続刊も電子版は2巻まで→ リクエストをよろしく (2) (FEEL COMICS swing)


【データ】
河内遙 (かわちはるか)
リクエストをよろしく
【発行元/発売元】祥伝社 (2015/10/13) 【レーベル】FEEL COMICS swing ※電子版で購入
■評価→ A(絶品) ■続刊購入する?→★★★★★
■購入:
amazon→ リクエストをよろしく (1) (FEEL COMICS swing)

売れない芸人・ソータの爽快ラジオパーソナリティ物語! 「こいつにはラジオの才能がある。」 売れない芸人・朝日屋颯太(あさひやそうた)は相方に逃げられ仕事がない! そんなある日、半年ぶりに現れた元相方が放送作家になって美人ディレクターを連れてきた。2人の手引きで颯太はラジオ業界に足を踏み入れるが…!? 超マイペース男とくせ者だらけのラジオ局の爽快ラジオ群像劇!!


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