マグネット島通信 1巻 (バンチコミックス)
■離島リハビリ話にSF風味をまぶしたほのぼの系。ゆったり感に好感。
船に乗り離島の磁辺島にやってきたのは、叔父の家を借りて住む青年。 目的地につくとそこは玄関が開けっ放しで、家の中には少女がいた。
という冒頭だが、ここからどう話を転がすのかというと、田舎ならではの 交流という方向に持っていく。もともとの家主である叔父が入院で 本土に行って以降、近所に住む少女の家が掃除や草むしりをしてくれており、 その流れで今回も青年がやってくるということで片付けをしてくれていた、 という流れ。そんな彼女は東京的なものに憧れがあり、東京の話をききたがり、 スターバックスの紙袋をありがたがる。
ロハス的な話かというとそこまで積極的ではない。青年の移住は、東京で住むのが厳しくなってきたのも理由のひとつ。翻訳家なのだが仕事が減ってきて生活が苦しくなったところだったので渡りに船であると。専門がタイ語である、という設定に妙なリアリティ。
で、東京人である彼に興味を持つ少女と、なんとなく馴染む青年の話に、島を活性化しようとするが空回りする移住者の女性を絡めつつ、しかし話を動かしていくのはそこではなくて、島によく落ちているマグネット的な何か。金属片が落ちており、それは形も様々で、形により別々の特性があるらしい。青年はそれを気にするが島でそこまで気にしている人はあまりいない。
という、ゆったりとした話だったのだが。一巻巻末でどかんとSFっぽい展開となり、そこで巻またぎ。面白そうには見えるが、ここまで見せて後はまたね、とする売り方が適切なのかどうか。紙の書籍の売上をあてにしないのであれば、出来る仕組みは色々あると思うんだけれど。なんでこういうことを言うのかというと、結構好きだけれど続刊出た時に買うかというと後回しにしそうなタイプの作品なので。普通に紙書籍の単行本スタイルを踏襲したいなら、ページ数増すか、展開早めるかして、も少し展開したところで巻またぎにしてほしかったところ。これだと背中押しが弱い気がします。
【データ】
伊藤正臣
(いとうまさおみ)
マグネット島通信
【発行元/発売元】新潮社 (2018/2/9)
【発行日】2018(平成30)年2月9日発行
※電子版で購入
■評価→
B(佳作)
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マグネット島通信 1巻 (バンチコミックス)
空から謎の金属片が降る島・磁辺島。タイ語翻訳家をしている本山田は、叔父の空き家を借り、都会から磁辺島へ移住することとなった。海が見える景色、豊かな自然、ゆっくりと流れる時間、人懐っこい島民との触れ合い。そんな新しい生活に心踊らせていたところ、島の空から謎の金属片が落ちてきた。それ以外にも見つかる島の謎。島の秘密が解き明かされていく、新感覚! SFファンタジー×アイランドストーリー!!
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