1.
貴家悠、橘賢一/ テラフォーマーズ
:
火星移住SFもの、そこにエイリアン的なものをぶちこむわけだが、それがゴキブリ、というところが邪道なようでSFとしてはまっとうな一品。主人公が最終的に助かるパニックアクションとしてではなく、むしろゴキブリが主人公なんじゃないかと思わせる構成も素敵。この一巻だけでも話は完結しているので一読をオススメ。
2.
弓月光/瞬きのソーニャ
:
ソ連が遺伝子操作を駆使して生み出した人間兵器の、唯一の成功作であるのがヒロイン。彼女の逃亡人生を綴る作品で、エロ漫画というわけでもない。それを、ベテラン弓月光が描く、という意外性も魅力。
3.
河原和音、アルコ/俺物語!!
:
河原和音とアルコの組み合わせという異色コラボレーションによるわかりやすい化学反応は、どちらも単独の作品では主役にすることはなかろうという人物を中心に据えたことだろう。絵柄も笑いを狙っているだけではない。内容はまごうことなく少女マンガである。
4.
コザキユースケ/どーにゃつ
:
ゆる系SF冒険活劇、とあるが、そうしたほうが売れるのか?体に穴があいた動物が人間の言葉をしゃべり活動する、その街は世紀末のように崩壊していて人がいない。シリアスな設定のなかで、脳天気な主人公が巻き込まれるサバイバル。ぬるく見えるが、結構すごい作品なのではないだろうか。
5.
西風/新説時代劇集 忍者 猿飛
:
いまどきの画風ではないだろうが、それを、エンスー漫画で有名な著者がチャレンジしているところも含めて、漫画の裾の広がりを感じさせる一作。飄々とした時代劇である。
6.
ドリヤス工場/あやかし古書庫と少女の魅宝
:
別にいま風の絵柄でも通用する話が、水木しげる的な絵で展開される。
ギャグでもカバーでもなくそうしたことを試みるのは著者にとって意味があるのかどうか、正直わからないが、漫画全体で見ればこういうものは重要。過去の遺産をどう転がしていくか、が文化のつながりと広がりを持つのだ。
7.
伊藤仁、楓月誠/Drc2
:
中二病、を題材にした話はそう珍しくないが、それを本当の病気として扱い、しかも、夢想していることそのままに実現してしまう、というのはユニーク。ここまでネタを広げてやる勢いがいい。
8.
秋★枝/恋愛視角化現象
:
結局クセのある作品やSFものをセレクトすることが多くなる年間オススメだが、本作もその性質はあり、ただしかわいらしい恋愛漫画。恋をするとツノがはえる、なんてのを可愛く描く。
下巻も読みました「恋愛視角化現象」
9.
琴葉とこ/メンヘラちゃん
:
精神不安定な子がヒロインの4コマ。おちゃらけたコメディとしてではなく、
シリアスな展開もある真面目な話。テーマにきちんと向き合って描いている、志の高い一作。
10.
永吉たける/ロボ犬ハチの家
:
これも一点突破もの。ロボであるハチがあくまでも犬であると主張し続けるコメディ。元々の作品はオムニバス形式なのでぼやっとした印象だったが、本作のように
一本に絞って展開すると読み応えあって面白かった。こういう旧作の再活用も漫画にとっては重要に思う。
一巻完結本は10冊に絞るのが難儀だったが・・・
1.
円城寺真己/プラスチック・サージェリー
:
今年読んだ本で一番わけが分からなかった。勢いのある一作。女性がホクロを気にして美容整形を受けたら、ホクロからビームが出るようになり、殺人兵器として追われることになる。そんな意味不明の話が勢いだけで展開されていく。この一冊、騙されたと思って読んでください。オススメします。
2.
穂積/式の前日
:
評判の一冊。確かにそれも理解できる。読ませる仕掛けを作り、推理もののように表に出していないサゲが容易されている。表題作は、両者の関係が何なのか、を読者に考えさせながら綴っていくものであり、他の作品も同様。巧い。他の作品もぜひ読みたい著者の登場である。
3.
山中ヒコ/500年の営み
:
壮大なBL。時を超えていく思いを描く作品であり、美しい。
4.
鈴木みそ/僕と日本が震えた日
:
震災をテーマに、深いところ描くルポコミック。放射能について、冷静に科学的なアプローチをしているエッセイは、実は世間にそうはない。それは問題であるのだが、そのため本作の存在感は目立つ。確かに帯にあるとおり、ルポコミックの名匠といえるだろう。
5.
冬川智子/マスタード・チョコレート
:
自分の居場所がない、と思っていたヒロインが、自分の居場所を見つけ出す話。けっしてこれが自分探しではなく、むしろありのままの自分をさらけ出し、認めてもらえる場所を探す話であることに注意したい。だからといってヒロインは自分で何もしないわけではなく、何かをしようと努力している。自分探し世代の話とは違う一作である。
6.
宮脇明子/ネロ〜Noir〜
:
パトラッシュの、あの、ネロをテーマにした話である。その話をもとに、作品を新たに創りあげてしまった。しかも、ダークな雰囲気をまとわせながら。物語は、ツイストをきかせて、復讐話だったはずが、読後感は悪くない。実に読ませる一品である。
7.
石井まゆみ/闇闇来るり
:
引き込まれる話。それが、え?ここで終わり・・・なの?と肩透かしを食らわせられた。その気持も皆様に味わっていただきたく、作品の質も当然高いので、改めてここでご紹介。
8.
石黒正数/外天楼
:
脱力系かと思って読んでいたら、真面目を通り越して、シュールなSFになり、シリアスな結末に、狐に包まれた感じになる。なんなんだこれは・・・成功なのか、失敗なのか。あなたの目でお確か目を。
9.
中島守男/先生!!原稿下さい。
:
こういう作品も入れておかないとね。箸休め。エロい作家と、担当の女子編集者という、その設定だけでやりとりするコントのようなコメディ。その設定の掘り下げ方がイイ。狭い世界のなかで話を転がしていくお手本のような仕上がり。
10.
ひらのあゆ/島の人
:
この作品は、開始から10年以上かけて一冊にまとまった、という点がやはり注目されるところ。時の流れと乖離した無人島での話だけに、作品ともシンクロする。
以上がオススメです。ではまた2013年もこのサイトをよろしくお願い致します。
【参考】
→
マンガ一巻読破 | 2011年のベストセレクション
→
マンガ一巻読破 | 2010年のベストセレクション
→
マンガ一巻読破 | 2009年のベストセレクション
→
マンガ一巻読破 | 2008年のベストセレクション
→
マンガ一巻読破 | 2007年のベストセレクション
→
マンガ一巻読破 | 2006年のベストセレクション